研究内容

当研究室の研究概要

私たちの身体や身のまわりのほとんどの物は、全て分子やイオン、それらが複合した材料からできています。ただ、それらは目には見えないほど小さく直接観察することが困難です。当研究室では、分子やイオンが持つ性質を利用して、これらの挙動を光や電気などの測定可能な信号に変換する手法の研究をしています。具体的には、対象となる分子の大きさや形状、極性などの性質を把握した上で、例えばその分子が吸着した場合だけ光る、といった分子認識のための“仕掛け’’を作ります。この仕掛けの動作に成功すれば、測定したい分子の動きが光や電気として可視化されるため、特定の物質の存在を確認したり反応を追跡したりする「化学分析」や「センシング」が可能となります。この研究はさまざまな物質を対象とすることができるため、病気の検査をはじめ、大気や水などの環境モニタリング、汚染物質や有害物質の検出、食品や薬の品質管理など、非常に幅広い分野への応用展開が期待できます。

電気化学分析:単層グラフェンのユニークな電気化学特性を活かす

【一山ら「支持膜担持ポリエチレンイミン修飾単層グラフェン電極を用いた電気化学測定」 日本分析化学会第73年会(2024).】

親水性ポリマー修飾単層グラフェン表面に脂質二分子膜を担持した電極の作製に成功しました。脂質二分子膜は絶縁膜なので系に存在する電気化学種と反応しません。抗菌剤などの膜孔形成毒素が存在すると電気化学種が膜を透過して反応し、検出されるようになります。

【Ryohei Suzuki et al., “Enhancement of Electrochemical Charge Transfer in the Reduction of Hexacyanoferrate(III)/(IV) by DPPZ Adsorbed on Monolayer Graphene Surface” MRM2023/IUMRS-ICA2023.】

単層グラフェン電極に特有の性質として、Fe(CN)6]3-/4-の酸化還元反応を測定するとき、溶液中にピリジン型窒素構造を含む低分子DPPZを加えると反応が活性化し、特に還元ピークが増大することを発見しました。ピリジン型窒素構造を含まない、ほぼ同じサイズの低分子DBPZを加えても反応効率は変化しません。

蛍光分析:酸化グラフェンと生体分子の相互作用を活かす

【木島ら「蛍光型酸化グラフェンバイオセンサの積層数と還元状態に依存する応答特性の変化」 日本分析化学会第72年会(2023).】

蛍光分子で標識したアプタマーという一本鎖DNAから成る分子認識素子を酸化グラフェン表面に修飾すると、酸化グラフェンの特殊な光学特性により、アプタマーと特異的に結合する標的分子が存在するときだけ蛍光が観測されるというバイオセンサが構築できます。酸化グラフェンの積層数が増えると、観察される蛍光強度が大きくなり、高感度化できることを見出しました。

【兼子ら「ピレン骨格で表面機能化された巨大ベシクルとグラフェン表面との相互作用」 日本分析化学会第72年会(2023).】

球状の小胞リポソームの壁面を構成する脂質二分子膜に、芳香族低分子のピレンを結合した脂質分子を混在させて酸化グラフェンを固定した基板と相互作用させると、ピレンと酸化グラフェンの間にはたらくπ-π相互作用によりリポソームが吸着し、基板を反転させても落下しない程度に安定に固定できることを発見しました。今後はリポソーム中に封入した化学物質の輸送技術などへの展開を目指します。

中央大学理工学部応用化学科

分子計測学研究室(上野研)

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Molecular Sensors and Analytical Chemistry Laboratory (Ueno Lab.)

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